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音楽・本について、色々。

Emily Dickinson - I died for Beauty - but was scarce

I died for Beauty - but was scarce
Adjusted in the Tomb
When One who died for Truth, was lain
In an adjoining Room -

He questioned softly "Why I failed"?
"For Beauty", I replied -
"And I - for Truth - Themself are One -
We Bretheren, are", He said -

And so, as Kinsmen, met a Night -
We talked between the Rooms -
Until the Moss had reached our lips -
And covered up - Our names -

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私は「美」のために死んだ―
棺にしつらえられ 休む間もなく
「真実」のために死んだ人が、
隣の部屋に 横たえられた―

彼は囁き 問いかけた「なぜ  僕は失敗した?」
「美のため」私は答えた―
「僕は―真実のため―けれど、美と真実は同じもの―
 僕たちは兄弟だ」彼は云った―

それで 身内のように、夜に落ち合い―
私たちは 部屋を隔てて 語り合った―
苔が 互いの唇に たどり着くまで―
そして 2人の名前を―覆い隠すまで―

Emily Dickinson - If you were coming in the Fall,

If you were coming in the Fall,
I'd brush the Summer by
With half a smile, and half a spurn,
As Housewives do, a Fly.

If I could see you in a year,
I'd wind the months in balls―
And put them each in separate Drawers,
For fear the numbers fuse

If only Centuries, delayed,
I'd count them on my Hand,
Subtracting, til my fingers dropped
Into Van Dieman's Land,

If certain, when this life was out―
That yours and mine, should be
I'd toss it yonder, like a Rind,
And take Eternity―

But, now, uncertain of the length
Of this, that is between,
It goads me, like the Goblin Bee―
That will not state― its sting.

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もしあなたが 秋に来てくださるなら
私は夏を 払いのけてしまうでしょう
半ば笑って、半ば素っ気なく
主婦が 蠅を追い払うみたいに

もし1年後に あなたに会えるのなら
月々をボールみたいに 丸めてしまうでしょう―
そして めいめいを 引き出しに分けておきます
月の数たちが 混ざらないように―

もしほんの数世紀、遅れるだけなら、
指折り数えています、引き算しつづけ
ついには ヴァンディーマン島
私の指が 落ちてしまうまで

もしも 確かに、この人生の終わりに―
あなたと私の時が あるのなら
私の生涯を、果物の皮のように放り捨て、
そうして 永遠を 選びとるでしょう

けれど、今は、この時間の不確かさが、
そしてその、隔たりこそが
鬼蜂のように、私を突き刺すのです―
何も告げられないこと―それは棘のように

The Moon is distant from the Sea – 原詩 / 訳

The Moon is distant from the Sea –
And yet, with Amber Hands –
She leads Him – docile as a Boy –
Along appointed Sands –

He never misses a Degree –
Obedient to Her eye –
He comes just so far – toward the Town –
Just so far – goes away –

Oh, Signor, Thine, the Amber Hand –
And mine – the distant Sea –
Obedient to the least command
Thine eye impose on me –

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月は海から遠い―
けれど、琥珀色の手で
彼女は彼を導く―少年のように従順な彼を
指し示された砂に沿って

彼は差異を見逃さず―
彼女の眼についていく―
ここまでたどり着いた―街の方へ―
ここまでのことは―消えてしまう

汝、あなたの琥珀の手―
そしてわたしのものでもある―
遠い海は―ほんのささいな命令にも従う
あなたの眼に課せられて―

The Moon is distant from the Sea – 解釈

海は月から遠く、触れることはない。夜闇の中、ただただ寄せては返す海は、心もとない。それもあって、一筋の明かりに引き寄せられるのだろう。照らし出される方向に、導かれるように。

遠く離れた、推し量るしかないひとに宛てられているかのよう。伝えられる言葉もなく、あの人が思っているであろうことに気持ちを寄せて、それについていく。この星のどこかで海が満ちる時、海はその前にいた、どこかのことは忘れてしまっている。ただ琥珀色の手についていくだけ。

「無意識」という海の中には、あらゆるものが溶けて混ざり合い、混ざらないものは暗い底の方でうごめいている。「感情」という月の光が指し示すのは、印象に残り、心を揺らしたもので、照らし出された残像が、夢の中で映し出される。夢とは、海(無意識)が月(感情)によって運ばれ、その海面に映されるものなのかもしれない。寄せては返す「呼吸」をしながら、イメージを反芻し、その印象や感情の理由を完全に理解することは出来なくても、月を追う海がそうであるように、少しでもその距離を近付けようとして。

夢はいつも的外れで、どこか心もとない。永遠に解からないものを、理解しようと思う心が見せるものでもある。その意味で、夢はどこか愛に似ている。

三月の歌(雪の果て)

三月の歌(雪の果て)

作詞/曲 大野円雅

雪の果てで 思い出した
忘れていた 声がしたから

雪に溺れ 山波にさらわれ
見失った果てで 聞き取った

足音 水の音
手のひらに 風のたなびき

言葉になろう
もう 忘れないように
言葉になろう
囁かれたままでいよう

探し当てた 水脈が今
季節渡し 夜を流した

山を降りて 町へ着く頃
星々よ 灯をともしていて

足許 泥濘めど
歩くたび 霧が晴れていく

言葉になろう
もう 忘れないように
言葉になろう
囁かれたままでいよう

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製作中のCDに収録予定の曲。

「雪景(歌詞音源)」のあとの景色。雪は果てる。きれいに見えた雪は泥濘に沈む。冬に削ぎ落とされた景色のあと、まだ何の花も咲かず、空や水にも青さはない。目に見えるものには、まだ何の鮮やかさも輝かしさもない。けれど「予感」があり、止まっていた場面が動き始める。それは静かだけれど確かなもの。これからの景色に、色を付ける前に、ひとまず灯だけをともす。

その兆しを忘れないよう、もう雪に迷わぬよう言葉にする。その言葉の意味を、これから生きようとする。それは大きな声で叫ぶものではない。言葉が立ち現れた時の、かすかな風のまま留めておこうと。

言葉を生きることで、言葉に「本当」の色が濃くなっていく。言葉を紡ぐことで、遥か昔からこれまでその言葉をなぞった幾多の人々の想いと重なり合い、それらが息づく通路がまた1つ増えていく。立ち現れる通路は、まだ冷えた季節の上「意味」を巡らせる。これから芽吹く季節が、すでに内側で息づき、そこに在ることを教えてくれる。