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Emily Dickinson - Because I could not stop for Death― 原詩 / 訳

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Because I could not stop for Death―
He kindly stopped for me―
The Carriage held but just Ourselves―
And Immortality.

We slowly drove―He knew no haste
And I had put away
My labor and my leisure too,
For His Civility―

We passed the School, where Children strove
At Recess―in the Ring―
We passed the Fields of Gazing Grain―
We passed the Setting Sun―

Or rather―He passed us―
The Dews drew quivering and chill―
For only Gossamer, my Gown―
My Tippet―only Tulle―

We paused before a House that seemed
A Swelling of the Ground―
The Roof was scarcely visible―
The Cornice―in the Ground―

Since then―‘tis Centuries―and yet
Feels shorter than the Day
I first surmised the Horses’ Heads
Were toward Eternity―

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“死”へと立ち止まれなかった 私のために―
“死”は 親切にも待っていてくれた―
この馬車はもう一杯だった ただ私と“死”―
そして“永遠”だけで

私たちは ゆっくりと運ばれていった―
“死”は 急ぐことを知らなかったから
私は勤めも暇も、手放していた
彼の親切に 応えるために―

学校を通り過ぎると 子供たちが遊んでいた
校庭で―輪になって―
こちらを見つめる 穀物たちの畑を過ぎ―
沈んでいく あの太陽を過ぎた―

というよりも―太陽が私たちを過ぎたのだ―
夜露は 震えと冷えを ひき連れてきた―
私のガウンは 蜘蛛の糸織りだけ―
私の礼服*は―ただのベールに過ぎなかったから―

やがて 私たちが止まったのは
新しい「家」らしきものの前
地面がふくらんでいて―
屋根は殆ど見えない―
蛇腹**も―その土の中へと―

あれから―何世紀も経つ―けれど未だに
あの日よりも 短く感じられるのだ
馬の頭が向かう先は永遠なのだ、と気付いた
はじまりのあの一日よりも、ずっと―

*
礼服 - Tippet:主として聖公会の主教や司祭が、sacrament以外の儀式を司式する時にsurpliceの上からつける黒いスカーフ状の式服。しばしばacademic hoodと共に用いられる。

**
蛇腹 - Cornice:壁または柱で支えられた水平材を飾る帯。古典建築では柱で支えられる部分(entablature)が3段に分かれており、最上部からそれぞれコーニス、フリーズ(frieze)、アーキトレーブ(architrave)と呼ぶ。