ohinanikki

音楽・本について、色々。

温い水

開かれた扉に
なぜか ふと振り向いた
読みかけの本から
眼が 離れていった

特別なしるしだから
特別でいようと決めた

足枷は 砂糖細工
温い水 溶かしていく
今はただ 西日の下
反射して 煌めくだけ

水に映る 夢のよう
あなたの瞳は
瞬く火を 湛え
静かに やり過ごして

揺れてる そのくせ毛に
似合う人になろうと思った

目が合うと 遠くで
水晶のぶつかる音
砦が そのたび
形を 変えていく

足枷は 砂糖細工
温い水 溶かしていく
今はただ 西日の下
反射して 煌めくだけ

水輪

みずわの 銀色光る
夜を ながめた
透明が 闇と 綾なす

灯台が 照らし始めた
こんなにも 歩いたことを

今 魔法の中を 通り抜けていく
今まであったこと 忘れてしまいたい

静かの海の上を 真似た アスファルト
月に星が 降りしきる 

灯台が 照らし始めた
こんなにも 歩いたことを

今 魔法の中を 通り抜けていく
今から起きること 忘れないでいたい

みずわの 銀色光る
夜を なだめて
透明が 闇と 綾なす

桟橋 Pt.Ⅱ

冬の朝明け 引き潮 煙って
漂泊の果てで 薄らいでゆく船
ひとけない 桟橋の上から 見てた
越境の時は いつも誰もいない

恋人よ 何一つも
気にしないで
この世界には 二人だけだと
気が付いて

瞬く隔たり 揺らぐ領国
暗転の瞬間は 橋が架かる合図
声になったことのない 言葉を
言いかける時を
あなたと生きていく

恋人よ 橋の上では
振り向かないで
この世界が 始まる時は
今、だから

果たされる 果ての
行き止まり
あなたは 私じゃない
だから、触れられる

恋人よ 何一つも
気にしないで
この世界には 二人だけだと
気が付いて

恋人よ 橋の上では
振り向かないで
この世界が 始まる時は
今、だから

----

→Pt. Ⅰ(2014)

Emily Dickinson - There’s a certain Slant of light, – 原詩 / 訳

f:id:oonomdk:20190724211603j:plain
There’s a certain Slant of light,
Winter Afternoons―
That oppresses, like the Heft
Of Cathedral Tunes―

Heavenly Hurt, it gives us―
We can find no scar,
But internal difference―
Where the Meanings, are―

None may teach it―Any―
‘Tis the seal Despair―
An imperial affliction
Sent us of the Air

When it comes, the Landscape listens―
Shadows – hold their breath―
When it goes, 'tis like the Distance
On the look of Death―

---

斜めに射し込む光がある、
冬の午後に―
のしかかる、それは まるで
大聖堂で聞く 旋律の重たさ

天国的な苦痛を、私たちに授ける
私たちは傷痕を 見つけられないが、
意図された、その場所で―
内なる変化が 起こる―

誰も明かせられない―何も―
それは 絶望のしるし
空から 送られてきた
荘厳な苦難―

その光が現れる時、
風景は 耳をそばだて―
影は― 息をひそめて
その光が去る時、
ふいに 引き離されるかのよう
「死」の表情によって―

Emily Dickinson - After great pain, a formal feeling comes – 原詩 / 訳

f:id:oonomdk:20190627213138j:plainAfter great pain, a formal feeling comes―
The Nerves sit ceremonious, like Tombs―
The stiff Heart questions ‘was it He, that bore,’
And ‘Yesterday, or Centuries before’?

The Feet, mechanical, go round―
A Wooden way
Of Ground, or Air, or Ought―
Regardless grown,
A Quartz contentment, like a stone―

This is the Hour of Lead―
Remembered, if outlived,
As Freezing persons, recollect the Snow―
First – Chill – then Stupor – then the letting go―

---

途轍もない痛みの後に、囚われた感情がやって来る―
神経たちは厳かにしゃがむ、墓石のように―
こわばった心は訊ねる 貫いたのは、彼だった?
それは昨日だったか、それとも何世紀も前だった?

足が、機械的に、歩き回って―
木でできた道を
地上の、空中の、それとも
他の何処かだとしても
気にならなくなって
石英は満ちたり、石になった心地

これは 鉛の時間だ―
もしも生き残れたなら、思い出すだろう
凍っていく人が、雪を想うように
はじめは―寒気―それから痺れ―
そして全てが 解き放たれて―