ohinanikki

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The Moon is distant from the Sea – 解釈

海は月から遠く、触れることはない。夜の闇の中、ただただ寄せて返す海は、心もとない。それもあって、一筋の明かりに引き寄せられるのだろう。照らし出される方向に、導かれるように。

遠く離れた、推し量るしかないひとに宛てられているかのよう。伝えられる言葉もなく、あの人が思っているであろうことに気持ちを寄せて、それについていく。この星のどこかで海が満ちる時、海はその前にいた、どこかのことは忘れてしまっている。ただ琥珀色の手についていくだけ。

「無意識」という海の中には、あらゆるものが溶けて混ざり合い、混ざらないものは暗い底の方でうごめいている。「感情」という月の光が指し示すのは、印象に残り、心を揺らしたもので、照らし出された残像が、夢の中で映し出される。夢とは、海(無意識)が月(感情)によって波立つ、その海面に映されるものなのかもしれない。寄せては返す「呼吸」をしながら、イメージを反芻し、その印象や感情の理由を完全に理解することは出来なくても、月を追う海がそうであるように、少しでもその距離を近付けようとして。

夢はいつも的外れで、どこか心もとない。永遠に解からないものを、理解しようと思う心が見せるものでもある。その意味で、夢はどこか愛に似ている。